心を繋ぐきもの

震災の数ヶ月後、家も家族も亡くされたお客さまがご来場くださいました。

津波の泥と瓦礫の中にやっと箪笥をみつけたと、、。泥だらけのなか、
上から2段の引き出しがあき、きものを数枚取り出した、、と
話してくれました。

あの日、その方は晴れやかで凛としたお着物姿でした。

そのお召しのきものは津波の後の箪笥からやっとの思いで取り出したもので、
お悉皆屋の手をかけてもらったお母様のお着物だったのです。

「こんな時に不謹慎かと思いましたが、母が喜んでくれるか、、と思って、、、着てきました、、。」

話す言葉は途切れ途切れでした。

そして「町を歩いても母といるようなんです、、」と。
そう言うと、大粒の涙が頬をつたり、泣き崩れてしまわれました。

胸を突き刺されるようなこの悲しみと苦しみをまえに私は言葉を
失いました。涙になるだけでした、、。

亡きお母様の着物が娘を包み、抱きとめているようでした。
そして、その声が私にも聞こえてくるようでした。s-刺し子帯1

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